私がまだ小学生の低学年の頃、親とタクシー乗り場でタクシーを待っていた時のこと。
先頭の赤ちゃんをベビーカーに乗せていたママさん、タクシーが来たので、ベビーカーをたたもうと、
眠っていた赤ちゃんを抱き上げて肩にのせました。
次の瞬間、ぐずりながらその肩を超え、ずるっと頭から滑り落ちた赤ちゃん・・・・。
鈍い音がして、コンクリートの上に仰向けに・・・・。
赤ちゃんぐったりして泣きもしませんでした。
慌てて出てくる運転手さん、まわりの大人も動揺しています。
ベビーカーそっちのけで赤ちゃんを抱き上げてタクシーに乗り込むママさん。
とてもとてもショックな光景でした。
それ以来、赤ちゃんを抱きかかえながら、ベビーカーをたたむという行為が、
怖いものになりました。
ベビーカーをたたまないことについて、述べられているこの文を読んだ時、
多くの人に読んで欲しいと、心から思いました。
”私たちがベビーカーと一緒に、電車、特に満員電車に乗るときは、
どうしてもその時間に乗らねばならぬ理由があるからで、
決して好き好んで他の方の邪魔になる時間に乗ってるわけではないのです。
で、そういう時私たちは、ベビーカーをたたまないのではなく、
たためない!!
が正解です。
なぜたためないのか、というと…
1、荷物が多いから
2、寝ている子どもを起こしたくないから
3、せっかく座ってくれた子を降ろしたくないから
4、疲れているから
5、そのほか状況に応じて
いくつも理由があるんです。
でも、私自身も、実際に子どもを持ち、ベビーカーに乗せて
電車に乗るまで気づかなかったわけですから、
電車の中で、なんとなく厳しい視線を送ってくる人や
優先席で寝たふりをして動かない人々の気持ちもわかります。
ということで、上記の理由についてもう少し詳しく説明してみます。
まず1から。荷物が多くてたためない。
だって、ベビーカーをたたむということは、
子どもを抱っこする、ということでしょ?
子どもを抱っこして、ベビーカーを持ったら、
それで両手がふさがります。
小さな子どもを連れていると荷物が多いので(この理由はさらに下に書きます)
荷物を持って、子どもを抱っこして、ベビーカーを持つ、という体制では
満員電車の揺れを、踏ん張ることはできません。
まあ、そういいつつも、
私は子どもが小さい間(1歳未満)は抱っこで出かけることも多く、
なんとかベビーカーをたたんでました。
でも、がんばりすぎて、あまりに毎日疲れるので
もう、ベビーカーをたたむことは諦めました。
たたまないからといって、ラクしているわけではありません。
ものすごくツライ体制で、周りの人にすみませんを連発して、
ベビーカーが乗れそうな隙間を見つけるまで電車を何本もやり過ごして
そしてやっとのことで乗るんです。
さて、何で荷物が多いのかというと。
たとえば、子どもの排泄物を持ち歩かなくてはならないから。
オムツを捨ててもよい場所は、ごく一部の場所のみなので
オフィス街に出歩くことが多い私の場合、子供の1日の排泄物を持ち帰ることになります。
たとえば、子どもが食べられるものが少ないから。
多少アレルギーのある息子、レストランに入って、食べられるものが無い!
ということも多々あります。オフィス街には子どもNGのお店も多いです。
食事をお弁当にして持ち歩く必要があるので、荷物がかさばります。
そのほか、タオルとか着替えとか飲み物とかおもちゃとか…
会議をなるべく穏便に終わらせるためには、いろいろと周到な用意が
必要になるため、いつも荷物が多くて体力的にも結構しんどいです。
ついでに、官公庁の集まるあたりに行けばいくほど、
階段しかない、エレベーターが遠い、急ぎ足のサラリーマンが
エレベーターに駆け込んでくる、など使いにくいことが多いです。
エレベーターは、急ぐために乗るものじゃない。
私も、実際に必要になって初めて、そのことに気づきました。
2について。
子どもを預けずに仕事をしている女性にとって、
昼寝のときが、唯一有効に活用できる時間なんです。
あとは子どもが寝た後しかありません。夜はとにかく眠い。
眠い時間に仕事したって、全然はかどらないのです。
だから、昼寝の時間はとても貴重。
気持ちよく寝ているところを起こされたら、大人だって機嫌悪くなるでしょう?
満員電車だから、ベビーカーでせっかく寝ている子どもを
抱きあげてベビーカーをたたんで…その間に子どもが起きます。
眠いところを起こされて、子どもはぐずるでしょう。
電車を降りるまで、延々と大きな声で泣き続けるかもしれません。
それでは周りの方に迷惑がかかるから、だから
ベビーカーをそのままにして、起こさないように電車に乗りたいのです。
ベビーカーは、電車に乗ってしまえば位置が低くて見えづらくなるので
いろんな人のかばんがあたったり、ムリに押されたり、人の足にあたったりします。
でも、それでもなるべく、子どもが起きないように振動を与えたくない。
子どもが起きて大声で泣くことを考えたら、多少足に当たるぐらい
大目に見ていただけませんか?
3については、うまく説明できるかどうかわかりませんが…
子どもは荷物とは違います。
ベビーカーに乗せるときに、すんなり乗ることもありますが、
すんなり乗らないことも多々あります。
「乗って」「やだ乗らない」と、毎回何十分も押し問答を
繰り返している人だっているんです。
ちなみに、先日満員電車でベビーカーから降ろそうとした私に、
2歳の息子は「危ないから降りない」と言いました。
いつも「危ないから座ってて」と言われている意味を
しっかり理解していることにも驚いたし、
満員電車でベビーカーをたたむことが、私にとって危ないことを
心配しての発言だったように思います。
子どもは大人が思うより、いろんなことを理解しています。。
空いている車内でベビーカーから降りてうろちょろしていると
危ないから座ってなさい、と言われるのに、
混んでるときはべビーカーから降りろ、だなんて、
子どもに対して、なんて大人は勝手なんでしょう。
4について。
新生児でも3キロぐらいあります。1歳過ぎたら10キロぐらいになってます。
毎日、10キロの米袋を運びながら動いていると考えたら、
疲れることもわかっていただけるでしょうか。
その10キロの米袋は、力いっぱいのけぞったり
抱っこしていても急に降りようとしたりします。
そのつど、10キロ以上の力を込めて、
落とさないように注意しなければなりません。
加えて、建物に入ったり、電車の乗換えなどの場面では
まだまだ階段が多く、ベビーカーを担ぎ上げなければ進めません。
毎日、筋肉痛との闘いです。
5について。
エレベーターについて上にも多少書きましたが、
電車の乗換えなどで、エレベーターがない、遠い、使えないということが
多々あるので、都内の場合、移動にストレスを感じている人が多いと思います。
エレベーターがない場合は、ベビーカーごとかついで階段を利用します。
係りの方にお願いするときは、ベビーカーに子どもを乗せておけません。
上述したように、子どもが寝ているときや降ろしたくないときは、
自分でやるしかないのです。だから毎日筋肉痛です。
階段では、ベビーカーを運ぶのを手伝ってくださる人が
多くなってきたように思います。最近は、たくさんの方が
声をかけてくださるようになりました。
でもエレベーターのマナーは、あまりいひどい。
もう一度言います。
エレベーターは、急いでいる人が使うためのものではありません。
私もなるべく、満員電車は避けたいし、できれば車で行きたい。
でも、電車で行けば1日1000円もかからない交通費が、車で行くと
駐車代だけで1万円を超えることもある。
子連れだと、少し動くにも時間がかかり、1日の仕事量は限られている。
稼ぎだってガクッと減ります。でも、お金はものすごくかかります。
駐車場との兼ね合いで、泣く泣く満員電車に乗らざるを得ないことも多いです。
そういういろいろな理由があって、
私たちは、満員電車に乗ることもあり、
ベビーカーをたためないことがあるのです。
そういうあれこれがいやで、家から出なくなって
一人で育児を抱え込んで、ノイローゼ気味になるという時期も
ありました。イライラすることが多くても、外に出て
仕事をする機会を設けることが、私にとっては息抜きのひとつに
なっていることも事実です。
私の場合、子どもを連れて仕事をしているので、
満員電車につきあわせたり、子どもにとって場違いな場所に
連れ出すことについて疑問に思うこともありました。
「預けたほうが、お互いにラクだよ」というアドバイスもあれば
「それでは子どもがかわいそうではないかしら?」
という意見もあったからです。
それについては、ピープルデザイン研究所の
須藤シンジさんに、明快なお答えをいただきました。
「子どもを連れていても、ぜひあなたにお願いしたい」と言われる仕事を
丁寧に続ければいいんですよ。
そうアドバイスいただいて、迷いがすっきりと消えました。
ということで、子連れで仕事をしています。
たまに預ける必要があるときもありますが、
「知らない人について言っちゃダメ」と言いながら
「(今初めて会った)このお姉さんと一緒に、しばらく遊んでいてね」
と言っても、ちょっと説得力ないでしょう。
最近は、
「おもちゃのある場所で遊んで待っているより、一緒にいたいというなら
お仕事が終わるまで少し静かに待っていてね」とお願いして
お互いがお互いの希望を伝え合いながら、子連れでなんとかやってます。
ちょっと話が脱線しましたが・・・
私たちは、楽しく子育てしたいんです。
ベビーカーをたたまないことが、もしかしたら多少無礼に
見えるのかもしれない。
当たり前みたいな顔で乗ってくるな、といいたい気持ちもわかる。
でもそれは、子どもと一緒に楽しく1日を過ごせるように
努力している結果でもあるということを、ご理解いただけたら
嬉しく思います。”