夜の9時すぎ、帰宅途中、
前方に男性に連れられたお散歩中のワンちゃんが見えました。
ワンちゃんの後ろ足、左が動かず、右が小刻みに震えています。
近くまで来ると解りました。
そのワンちゃん、腰から下がどうやら不自由のようです。
おじさんが下げている懐中電灯に照らされたワンちゃん、
本当に楽しそうで、思わず声をかけてしまいました。
「お散歩?」
ワンちゃんに声をかけたつもりだけど、当然おじさんが答えてくれます。
「散歩が好きでね・・・。散歩行きたがってね・・・。
行けないとストレスで夜、吐くもんだから・・・。」
コーギー犬特有の大きなクリクリとした瞳が楽しそうに輝いています。
「きれいなお目ですねぇー。」
「もう歳でね。腰やられちゃってね。
動けないもんだからよ、
ホームセンターに行って、いろいろ買ってきて作ったよ。」
よく見ると、ショッピングカートの車輪の部分をリヤカー風に改造して、
ワンちゃんの腰にくくりつけてありました。
ゆっくりゆっくり進んでいくワンちゃん、
道端の雑草に顔をうずめたり、耳をピクピク動かしたり・・・。
満足気に前方をみつめて、意気揚々と前足2本で歩いています。
「お散歩すっごく楽しそう。」
「もう16年も一緒にいるもんだからよ、
最後までみてやらんと・・・・・。」
「素敵です・・・・・
とても幸せなワンちゃんですね・・・・・。」
「またお会いできますよう。」そう言って、
ワンちゃんの歩みに合わせてゆっくりゆっくり歩いて行くおじさんと
ワンちゃんとお別れしました。
柔和なおじさんの表情と朴訥なお声の余韻を感じながら
柔らかな懐中電灯の明かりがゆ〜らゆらゆれて小さくなっていくのを見送っていると
気がつけば
涼しげな虫の音に包まれていました。
人もどこか具合が悪くなって、周りの人に迷惑をかけるようになったとしても、
胸を張って生きていけるといいなあ。
そんな風にも思いました。