許せないという病

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許せないという病

片田珠美

”本当はイライラせず、笑って毎日を過ごしたいのに、「あいつだけは許せない」。

誰かを許せない理由は、自分。” 本の帯より

 

精神科医が書いた「他人を許せない心理を分析し、ラクに生きるための処方箋」・・・といえば一番ぴったりくるかな?

誰かを許せなくて苦しんでいる時に一番大切なことは言うまでもなく、『心の平穏を取り戻すこと』

そのためにどういう努力をすればいいのか、わかりやすく書かれています。

”第1章 他人を許せなくて悩んでいる人たち

第2章 なぜ「許せない」のか?

3章 「許せない」を引きずる人の特徴

第4章 「許せない」という病から抜け出すための四つのステップ

第5章 「許せない」自分を許すために”

作者はフランスで精神分析を学んだ精神科医なので、フロイトの概念がところどころ出てきます。

「喪の作業」ができていない人が、許せない思いをいつまでも引きずる人。

これは余命を告げられた人が克服すべき、死の受容五段階説

『否認・怒り・取引・抑うつ・受容』のことですが、

「許せない人はどこかの段階でフリーズしてしまっているから、許せない」

という説にはなるほどと思いました。

自分がどこまで受容しているかを見極めることが“許せない”から抜け出すカギとなるようです。

自分が怒りを感じている事を認識する事、自分のルールを他人に押し付けようとしている事を認識する事、

正義をふりかざしたい時こそ自分自身の正義の正体と向き合うべき、

つまり傷付いた事を認識し、怒りを受け入れて、相手を理解しようとする事、

許さなければ……と躍起にならず「許さなきゃ」という思い込みを捨て、

じっくり自分の心と向き合うことが大切。

昨今『許し』を説いたスピリチュアル系の本もたくさん出ています。

許しは贈り物、許したら忘れなければならないという誤解、直ぐに原因探し・意味づけをしようとする事が、

少なからず許せない自分の感情をより苦しい物にしている場合もあるということに気づきました。

 

特に印象に残ったこと

文中に面白い例えがありました。

夜道、強盗からバックを奪われた際に、ナイフで腕を傷つけられた!

治療してくれるのは医師や看護婦であり、強盗ではない。

心に傷を受けた場合も相手が心の傷を癒してくれるわけではない。

謝罪や許しを乞うのを待っていて、許すか許さないかを決めるより、自分の人生を自分の手に取り戻そう!

そしてもう一つ。
ラ・ロシュフコーの「幸福な人はめったに自分の非を改めない。そして運が彼らの悪行を支えているにすぎない時でも、決まって自分が正しいのだと信じている」

つまり幸福な人ほど、他人を不快にしても傷つけても平気で、罪悪感など抱かない、他人の痛みにも鈍感で、よほどの不幸が自分の身に降りかからない限り、反省などしないように見える。

 

 

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