パリのアートセラピー事情

欧米で注目され始めているアートセラピー。広い意味での困難や障害などを持つ人たちが、デッサン、絵画、音楽、演劇、ダンスなど様々な分野のアートを通して自由な感情表現を行う心理療法のひとつである。

 2002年からイギリスで始まった、5歳~16歳の子供約1万人を対象にしたアートセラピーのプログラムの成果が公表された。10週間のプログラムのアートセラピーに参加した子供たちは、終了後、40%以上が感情的な問題を減少させており、15%が問題行動の減少がみられた。特にうつ病に効果があり、プログラム終了後には、うつ症状が見られた子供が22%から4%へと減少していた。

 自分の好きな方法で自己表現してみる。そこには何の規制もなく、あくまで自由だ。言葉で表現できないことも、他の方法で吐き出す事ができる。まず表現する事、自分の感情を吐露するところから始まるのではないだろうか。どんな方法でもどんなことでも良い。

 フランスでは大人の塗り絵がはやっているが、これは一心不乱に色を塗る事によってストレス解消となるということらしい。ひとは何かに集中して夢中になっている時、他のことを忘れる事ができる。それは体を動かす事もそうだと思う。音楽に合わせて力一杯踊ってみる。歌ってみる。そういう何かに集中する時間が人を癒やすのかもしれない。

 創作することによって自分の内に閉じ込めてしまった感情を吐き出し、自分を解放できるのかもしれない。昔、演劇を志す人から、「何かを作らなければ、表現しなければ自分は死んでしまう」と聞いた事がある。演劇がその人のアートセラピーだったのであろう。

 フランスのアートセラピーは、アルツハイマーやパーキンソン病など、主に60歳以上の人々を対象に行われているが、若年層のうつ病が増えている中、こうしたセラピーが広い世代に広がると良いと思う。学校にアート・ルームなどを設置し、定期的な活動を行えば、自殺予防にもなるかもしれない。

 表現する事、何かに夢中になること。私もいつも何かに夢中になっている。そして集中している時はたしかに全てを忘れて没頭している。それが良いのだと思う。自分の感情を表現する何らかの方法を見つけられたら、呪縛から解放され、癒やされ、自由になれるのかもしれない。yomiDr.より

 

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