身体の時間

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身体の時間 ─<今>を生きるための精神病理学

野間俊一

”現代社会では速さが求められる。効率は、すべてにまさる免罪符だ。そこでは“今”は、未だ結果を得ない不全の時間にすぎず、そのことが、身体を疎外し、心の耐性に負荷をかける。本書では、新型うつ病や解離性障害など、様々な精神病理を臨床例から検証、時代の加速化が視野を狭め、不意打ち的外傷が蔓延する現代に、私たちが生命性を回復し、“今”を豊かに生きるためになにが必要か、その叡智を探りだす。”

「book」データベースより

「私をおいて行かないで」

この言葉に惹かれて読み始めましたが、精神科医(臨床医)が書いた、

カチコチの専門書と言った感覚ではなく、読み物とした感覚でさらりと頭に入って来やすいと思います。

 

さまざまな精神疾患について、自分に置き換えたり、

また、社会の問題としてとしてどのように関わっていけばよいのか、

身体だけではなく、時間軸から見た視点でも語られています。

 

最近激増している症例について、実際の臨床風景の記述が多く、読んでいてとても興味深かったです。

身近な人が精神疾患で、なんとか理解したいと思っている方にもおすすめです。

 

例えば、PTSDの治療の基本は、本人に自己コントロール感を取り戻させることが最重要と考えられています。

災害による被災にしても暴行被害にしても、自分はなにもできなかったという無力感と、

被害に遭っていないほかの人にはわかってもらえないという孤立感が、被害者の心を打ちのめしている。

この場合、治療者は過度な同情や被害者との一体感や、ただの傍観者でしかないといった罪悪感を持ってもいけない。

被害者が自分の体験した苦痛を再体験し整理し直すことでもない。

大切なのは被害者の苦悩が基本的なところで共感され、自身の体験と存在が肯定されることと述べられている。

 

今を豊かに生きるために。

 

このためにはもちろん様々な面からのアプローチが必要だと思いますが、

支援が必要と感じてる人に、過度に干渉されること無く適切な支援が与えれる環境が大切だと思います。

 

その取っ掛かりとしてこの本を多くの人に読んでもらえたらと思います。

 

 

 

 

 

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