林檎の樹
ゴールズワージー
英国の古き良き時代の田園風景を背景に、
若さゆえの未熟さ、身分の違いの悲恋を描いた小説。
川端康成はこの小説を読んで『伊豆の踊子』を書いたと言われています。
ほろ苦さとともに、心の中にしまっていたあの夏の恋が、
26年の歳月を経て、再び訪れた土地で、
自殺者だと思われるお墓を見た時に後悔とともに溢れて・・・。
描写が細やかで幻想的で・・・
主人公たちは雄弁でもないけれど、心の葛藤が痛いほど伝わってくる。
後に『A Summer Story』という題で映画化されています。
小説では主人公たちのキスだけの純愛と自殺といったstoryですが、
映画の方は17歳の夏の逢瀬で彼女が妊娠し、難産の末、死亡。
26年後、彼が妻を伴い、その懐かしの土地を訪れた際に、
目線を合わせて微笑みかける自分の息子とすれ違うという、なんとも苦しい結末となっています。
高校生の時に夢中になって読みました。
恋愛は、
一方が勝手に終わらせたつもりになっていても、
残された一方にとっては想像もつかない苦しみとなること。
相手の心を追って心がいつまでも彷徨うような、そんな終わり方をしてはならない、
過去のものとして忘れることができるよう、きちんと伝えて終わらせることが大切、
ということを学びました。
あまりに詩的で美しい林檎の樹の描写に、
薄ピンクの蕾と白い花を咲かせる林檎の樹を月夜に見上げてみたい・・・。
そんな思いが心に広がったのを覚えています。