今の職場に父に似た男性がいることに気づいたのは、
昨年の晩秋の頃でしょうか。
はにかみながらの笑顔、体型もそっくりです。
お見かけする度、父のことを考えてしまいます。
私の心のなかの父は私がまだ学生だった頃の父。
寡黙な父。
家に飾られていた、皆勤や表彰盾などの類からとても仕事熱心だということがわかる。
私が中学生の頃から家に帰ってくることがなくなり、
他に家庭を持っていたということがわかったのが高校生になった時だった。
父が危篤だという知らせが入ったのは15年前。
久しぶりに合う父は実年齢より30歳ほども老けて見えたことが、
とてもとても悲しかった。
「父は幸せに暮らしている」そう思うことで、
「父には父の人生がある。」と、どこか距離をおいて考えることができてような気がしていた・・・。
父が娘としての私に語ってくれたこと、
どんな言葉があったか、どうしても浮かんでこない・・・というか、たぶん無いのだろう。
私自身が親となり、子供を育てていく過程でたくさん子供に話してきた。
語りたくて、伝えたくて、子供の思っていること、考えていること知りたくて、
いつもいつも言葉をかけてきた。
親になってはじめて分かった・・・・・・・この寂しさ。
父にとって私はいったいどういった存在だったのか・・・考えてしまう自分がいる。
最後に・・・マスクを付けられ、もう息をするのもやっとで、全く話すことができない状態の中、
聞こえるはずないのに、はっきり聞こえた父の声。
「こんなところにいないで、◯◯君のところへ帰りなさい。」
◯◯君は夫の名。
そんな一言だけを残して旅立ってしまうなんて・・・。