盲導犬

障がい者カヌーのボランティアをさせて頂いている関係で、

盲導犬に接することが何度かありました。

 

いつでも健気に振る舞うその姿に、

いじらしくて、可愛くて、心がキューっとなります。

 shikaku_moudouken

盲導犬候補の子犬を約10ヵ月間、家族の一員として育てる、

パピーウォーカーをやりたいと思った時期もありましたが、

仕事との両立は難しいと、断念。

 

以下、無私の愛溢れる素敵なお話を引用します。

 

6歳のテックスは、
シール家で、子犬の時から飼われていたが、
オーストラリア産の牧畜犬としては、
珍しく気立てが良かった。

だから、犬小屋に、
家の前に捨てられていた、
ハインツと名づけた新しい子犬が入って来ると、
彼は、この子犬のために、
喜んで場所をあけた。

ハインツが現れる少し前に、
シール夫妻は、
テックスの目が悪くなっていることに、
気づいたばかりだった。

専門医に連れて行くと、
大学の獣医科研究室で、
検査を受けるよう勧められた。

その結果、テックスはすでに、
視力を失っていることがわかった。

そういえばこの2~3ヶ月、
テックスの様子は、確かに変だった。

門が開いているのに、気づかなかったり、
フェンスの金網に、鼻面をぶつけたり・・・・・・。

家へ出入りするのに、
必ず、砂利の小路を
通っていたわけも納得できた。

砂利道からそれると、
ふらつきながら、
もう一度そこまで戻るのも、
目が見えなかったからなのだ。

夫妻が、テックスの目のことで、
心を痛めているのをよそに、
ハインツは丸々と太り、
元気にはね回るようになった。

その濃茶と、黒の毛皮は、
健康そのものに、つやつやしてきた。

しだいに、彼のもう一方の親が、
大型犬であることも、はっきりしてきた。

犬小屋に、居候させてもらうのが、
きつくなってきたのだ。

ある週末、シール夫妻は、
その横に、新しい犬小屋を作った。

やがて、ハインツが、
テックスを、押したり、
引っ張ったりしていたのには、
ちゃんとした理由があったことが
わかってきた。

ただじゃれついているだけに
見える動作には、
ひとつひとつ意味があった。

ハインツは、テックスの、
『盲導犬』になっていたのである。

毎晩、犬小屋に引き上げる時間になると、
ハインツは、テックスの鼻先を、
そっと口にくわえて、彼を犬小屋に導いた。

朝は、彼を起き上がらせ、小屋の外へ出した。

門のそばまで来ると、
ハインツは肩を使って、
テックスを先に通した。

囲いの中を、
フェンスに沿って走り回るときは、
ハインツが、テックスと金網のあいだに入った。

シール夫人は語る。

『お天気のいい日にテックスは、
車寄せのアスファルトの上で、
寝そべっているでしょう?

車が入ってくると、ハインツが、
あの子を鼻で突付いて起こして、
安全なところへ連れていくのよ』

「馬が走ってきたとき、
ハインツがテックスを、
脇に押しているのも、何回も見たわ。

それに、最初はどうして2匹が並んで、
牧場を、思い切り走れるのか
わからなかったけど、
この前、私が馬で出かけたとき、
あの2匹がついてきたんでわかったの。

ハインツが声を出していたのよ。
あの子は、テックスが
ぴったりくっついてこられるように、
低い声で、ずっと誘導していたのね』

シール夫妻は、畏敬の念を抱いた。

その若い犬は、
誰からも教えられていないのに、
どんな場面においても、
自分なりに工夫して、
相棒を守り導いていたのである。

ハインツはテックスに、
自分の目だけではなく、
その心も分け与えていたのだ。

テックスの目より

 

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