ずいぶん昔の話しになりますが、
二人の息子はそれぞれ予定日より2ヶ月、1ヶ月半も早く生まれてしまった未熟児です。
(今ではもう二人共、時々私を子ども扱いするほど、生意気に成長しましたが。)
赤ちゃんというからには、
赤みを帯び「おぎゃ〜」と生まれて来るもんだとばかり思っていたのに、
まだ体毛も残ったままのみずみずしさも感じられない、まるで枯木のような細い身体と、手足。
マッチ棒のような指。
泣き声をあげない。
出生時2,000gはあったのですが、10%はすぐに減ってしまうとかで、
こんな感じの箱に入れられた「箱入り息子」、身体にたくさんの管がつながっていました 。
こちらの箱のお世話になった後、箱を出てからも、もう少し、病院のお世話になり、
ようやく家での育児が始まりました。
母乳を飲む力が弱く、数分だけしか飲むことが出来ず、
飲みながらすぐに疲れてトロトロ眠り・・・かと思うと、すぐに弱々しい声で泣く・・・。
一日24回くらい授乳している時もありました。
ちょっとした熱からでも肺炎や腸炎を起こし、
何度も入退院を繰り返しました。
子どもの体調が悪い日には苦しそうなその姿、見ていられなくて、食べ物も喉を通りません。
付き添いのため、無理して食べなきゃと飲み込んだご飯はまるで砂を噛んでいるよう・・・。
それでも私は窓から外を眺めた時には清々しい風を感じ、
木の葉の輝きを感じることが出来ます。
小児専門の県立こども病院にはいろいろな病気のお子さんたちが入院しています。
先天性のものが多く、小さな身体で何度も手術に耐えているお子さん。
難病と言われる病気のお子さん。
一度も外にでたことのないお子さん。
その子たちは清々しい風も、木の葉の輝きも感じることがないのです。
夜の自動販売機の前、となりで腰掛けてジュースを飲んでいた、
あるお母さんが話しかけてこられました。
「私の息子は4歳だけど、喘息がひどくて生まれた時からずっと入院している。
夜中に咳き込んで息ができなくなるから、ほとんど家に帰ったことないかな・・・。
私・・・・ガンなの。
息子を抱いている時に、息子が私の喉を触って、お母さん、これなあに?って、
聞いてきて・・・ビー玉みたいなグリグリしたしこり・・・
ガンが見つかった。
私、シングルマザーだから、仕事しなきゃならないし、自分の治療しながら、
子どもの付き添いは本当に大変。
薬飲むとね、吐き気がして・・・・。ご飯が食べられないの・・・。
せめて息子が14歳になるまでは生きていてやりたい。
14歳くらいになったら、一人でも生きていけるだろう・・・から・・・。
あと、10年・・・・・もつかな・・・・・。」
このお話を聞いた日から、私は、
子育てが大変だとか、
子どもが入院ばかりして大変だとか、
心配してご飯が喉を通らないとか、
絶対に思えなくなりました。
自分が元気で子育てができること、
そして自分の寿命のことを考えることなく生きていること。
どれほど幸せなことでしょう。
あのお母さんが、息子さんの14歳の誕生日を、二人で楽しく迎えられたことを、願わずにはいられません。