『娘と父のマジトーク』このシリーズは全てとても興味深いです。
「お父さんがキモい理由を説明するね」
“父と娘が一緒にお風呂”は何年生まで?
父: サオリ(仮名)ってさ、二言目にはお父さんを「キモい」って言うよね。
娘: だって、キモいんだもん。
父: いつごろからキモかった?
娘: はっきりは覚えていないけど、小学校5年生くらい。
父: 一緒にお風呂入ったのは小学校3~4年生までで、それからはイヤがってたよね。
娘: それが普通じゃないかな。高学年で父親とお風呂に入るのは変じゃない?
父: それは家庭によるから断言できないけど、お父さんも似た印象かな。でも、お風呂はともかく、手をつないで歩くこともしてくれなくなったよね。
娘: やだよ! 友達に見られたら恥ずかしいもん。
父: えー、親子仲睦まじくしていることの、何が恥ずかしいの?
娘: だって……キモいんだもん。
キモいの意味、教えて
父: 何でもかんでも「キモい」とか「カワイイ」って形容詞で単純化するのは、女子学生の悪い癖だぞ。キモいって言葉を、もうちょっと別の表現で説明しなさい。
娘: 何て言うのかな、本当に「オェェ……」て感じで気持ち悪い。ゾワゾワする。
父: 毎日ちゃんとお風呂入って、歯も磨いて、清潔にしてるぞ。
娘: 清潔かどうかってことじゃなくて、行動とかしゃべり方とか……存在そのものが気持ち悪いの。
父: ……(言葉が出ない)。
娘: ごめんね、でもそう思ってしまうの。
父: ぐ、具体的にどういう言動がキモいの?
娘: いっぱいあるよ。まず、あたしにベタベタしてくるでしょ? 可愛がりすぎるのがキモい。あと、フツーにサオリって名前で呼べばいいのに、サオリタンとかサオリンとか変なアダ名つけてすり寄ってくるじゃない、あれ何。いい大人がそんなことするの、気味が悪い。そんな家庭、絶対にないよ。
父: それは、父なりの愛情表現というやつなんだが。
娘: かもしれないけど、気持ち悪いよ。他にも、お風呂の後で素っ裸で歩くのやめて。ただでさえ、お腹ブヨブヨでみっともない。女の子がいるんだから、ちょっとは遠慮してよね。
父: す、すまん……。
娘: 運動会とかの学校行事で、校庭であたしを見つけると満面の笑みで全力で手を振ってくるのも、すごく恥ずかしい。横にいた友達が軽く引いてたんだから。
父: すてきなパパだなって思ってるかもよ。
娘: 思うか! あと、くしゃみする時も、ハクションってふつーにすればいいのに、わざとらしく、「ヘックショホホォォオォォォイイィィィィィ、ホイホイホイィィィ」とか、バカみたい。あたしの気を引こうとしてるの、見え見え。面白くなんか、ないんだから。
父: ……。
娘: そーゆーのをまとめて、キモいって言ってるの。お父さん、あたしのこと好きすぎるかもしれないけど、フツーに大人っぽくしてて。お願いだから、もっと落ち着いてて。
父: いろいろ、すみません……。
ほっぺにキスはNG
娘: ついでだから言うけど、あたしが寝てるとき、ほっぺたにキスしてくるのだって、知ってるからね。内心「うぎゃーーー」だけど、ガマンしてあげてるんだから。他人が見たら、ド変態行為だよ。
父: な、何を言う! アメリカでは日常茶飯事だ。ドラマとかで、父と娘が「おやすみ、ハニー」「おやすみなさい、パパ」ってやっているシーン、見たことあるだろ。キュってハグしてて、微笑ましいだろ。しかも、娘が成人してる大人ってパターンも多いんだぞ。
娘: それはアメリカだから! ここは日本! お父さんはアメリカで暮らしてたことがあるからそうかもしれないけど、文化が違うでしょ。
父: いや待てよ。サオリってなぜか赤ん坊のころから、お父さんとのスキンシップをことごとく嫌がってたよな……。それって、異常なんじゃないか? お前こそ、変人なんじゃないか?
娘: そりゃ、毎日毎日ぶちゅーってされてたら、どんな赤ちゃんでも嫌がるよ。度が過ぎるんだって。
父: 我が家もアメリカ式で、やっちゃダメかな? ハグとか、ほっぺにキス、したいんだけどな。
娘: 変態オヤジめ……次やったら、殺す(怒)。
父はキモく、母はキモくない
父: 確認だけど、キモいのはお父さんだけ? お母さんはキモくない?
娘: うん。
父: 父はキモく、母はキモくない、と。
娘: そうだよ。
父: お父さん以外の成人男性で、キモい人はいる? 例えば、おじいちゃんとか、叔父さんとか親戚関係とか。
娘: うーん。当然、お風呂は誰とも入らないけど、お父さん以上にキモい人はいないね。成人男性全員がキモいんじゃなくて、お父さんがキモい。そこ勘違いしないで。
父: つまり、お父さんが世界一キモい、と。
娘: ブッチギリだね(キッパリ)。
父: ……お、お父さんのこと、好き?
娘: フツー。
父: フツー……?
娘: ビミョー?
父: 涙で、お寿司が見えなくなってきた……。
娘: まあまあ、嫌いじゃないからさ(笑)。
父が死んだら悲しいか?
父: じゃあ聞くけどね、仮にお父さんが海外転勤になって3年間離れ離れになるとして、寂しくない?
娘: (ちょっと考えて)……大丈夫、かな。3年なんて、すぐだよ。
父: じゃあ、10年なら? いま13歳だから、次に会うのは23歳だぞ。それでもいいのか。
娘: それはちょっと長いかな……まあ、3年までならOK。
父: これがお母さんなら、どれだけガマンできる?
娘: お母さんと離れ離れになるのはイヤ。
父: 同じ親なのに、その差は何なの?
娘: だって、お母さんとのほうが、過ごした時間が長いじゃない? 単純な年月って意味じゃなくて、一緒にいた時間が、母親のほうが長いからだと思うけど。
父: (だんだんヤケクソ気味に)じゃあ、お父さんが死んだら!? 明日、お父さんがダンプにバーンってひかれてバラバラになったらどう? それでも、フツーって言う?
娘: それはダメ。悲しいです。
父: お父さんが死ぬのはダメで悲しいけど、3年間離れて暮らすのは苦にはならない程度の存在……っと。
娘: そんなかんじでよろしく(笑)。
汚名返上したいのだが
父: いま、お父さんかなりショックを受けて、食欲も吹っ飛んだよ……。何かしら「お父さんのいいとこ」を挙げてくれない? でないと、立ち直れない気がする。
娘: いいとこかー、うーーーん……何だろな。
父: 何かあるだろ? ウチのとーちゃん立派だなとか、すげーなってなる瞬間が。
娘: 物知りでいろいろ教えてくれるよね。知識が豊富。宿題でわからないとき、お母さんが分からないことを、お父さんはサッと教えてくれたりするとき、スゴイって思う。
父: そうだろそうだろ、他には?
娘: 英語ができるとこも、かな。映画を字幕なしで観れたり、英検1級持ってるところとか。海外旅行に一緒に行っても、安心だし。
父: うんうん、もっと言いなさい。
娘: そんなところかな。あ、でも英語で歌を歌うの、ヘタ過ぎて耐えられない。車の中でビージーズ(BeeGees)のCDに合わせてカラオケするの、やめてくれる?
父: はい……。
娘に、核心を突かれてしまう
父: キモくないお父さんを目指して努力したいんで、「こうすればキモくない」ってリクエストを聞かせてよ。
娘: じゃあね、ベタベタじゃなくて、もっとあたしに厳しく接してくれる?
父: 厳しく? リクエストとして、変じゃない?
娘: もっと、自然に振舞ってほしいの。娘が好きって感情を抑えて、いいものはいい、ダメなものはダメって言ってほしい。親は子どもに対して、叱るべきときはビシっと叱るべき。甘やかしてばかりだと、何ていうのかな……子供の人生をダメにしちゃうんじゃないの?
父: まじめか! そんな、優等生っぽい答え、聞きたくねーわ。
娘: 娘に好かれたいがあまりに、必要以上に甘くなったり、モノで釣るようなお父さんにはならないでよ。
父: (ギクッ)……。
娘: 頼みもしないのに、よくアイス買ってくれたりするよね?
父: ま、まあ今年の夏は格別に暑かったからな。えっーと、もしもだよ? お父さんがサオリに、「何でも買ってあげるから、好きなものを言ってごらん」とか「お小遣いがほしいのかい? いくら必要だい?」ってすり寄ったりしたら……?
娘: みっともないって。そんなことで、あたしが心を開くとか、キモいって思わなくなるなんて、ないからね。
父: だ、だよね。確認しただけだよ……。
やっぱり父はキモかった
父: こんなショック受けたの、久しぶりだわ……。
娘: お父さんがあたしを可愛がってくれるのはよく分かるよ? でも、見た目で判断しているような気がするんだよね。例えば、仮にあたしがデブでブスだったら、今ほどには可愛がってくれないんじゃないの?
父: そんなことはない! 娘はいついかなるときも可愛いものだ。サオリは赤ん坊のころ、ものすごいデブで顔がパンパンで、しかも二重アゴだったのお前も知ってるだろ? ホラ。
(と、当時の写真を待受画面にしたiPhoneを見せる)
娘: ちょ、ちょっと、そんな写真を待ち受けにしないでよ! まさかそれ誠編集部の人に見せてないよね!
父: 可愛いから、いいんだよ(笑)。
娘: あ~~~、お父さんって、本当にキモい!
今回は、相当ショックで、寿司がノドを通りませんでした。いつもなら8~9皿食べるところが、3皿で手が止まってしまいました。良かれと思ってやっていた愛情表現の全てを否定されてしまいました。
「キモい、キモいってわめくのは、親子間の照れが言わせているのであって、実はけっこうリスペクトしてくれているのだろう」という淡い期待があったので、反動をもろに食らってしまったかっこうです。
年頃の娘に父親があからさまな好き好きビームを発するのは、実にかっこう悪いというか、しまりがない行為のようです。唯一の収穫は、「あたしに厳しく接して」という要求でしょうか。思っている以上に精神的に成長している様子が伺えて嬉しかったです。”