夫がまだ会社員になりたての20代前半の頃、30才そこそこの先輩に連れられて、
いわゆる一流と言われる数多くのバーやレストラン、料亭に通ったそうだ。
一人では、まして若い自分が決して覗くことができない世界を、
高級なお酒や食事を通して、そこに集う人たちを通して学ぶことができたらしい。
本物の持つ価値を感じたと・・・。
「どうしてこの先輩は30代なのに、全部おごってくれるような、
そんな生活ができたの?」
「そんな風にあちこち連れて行ってもらって、
ただ静かによいお酒を楽しみ、食事を楽しみ、良い雰囲気を楽しむ・・・・。
その場所で何か、特別な会話が交わされたような記憶もない・・・。
そんなが生活が数年続いたあと、その先輩は入院し、数カ月後亡くなったんだ。
たぶん先輩は自分の死期を知っていたんだと思う。
残された人生をどんな風に過ごすか・・・仕事をしながらできることを考え、
美食や美酒、最高の接客、店構えといった本物に触れる贅沢を味わい、
本物を知りたいと思ったんじゃないかな・・・。
この先輩のお陰で妥協しないことと、
いつ死んでも後悔しないベストを尽くす生き方を学んだ気がする。」
この夫の話を聞いた時から、私の中で常に自分にとっての本物は何なのかを考え、感じることと、
そしてその本物を求めることを優先するようになりました。