エレンの日記 ふみ−
セラピーに通ってきてくれてる10代の女の子が「先生、よかったら読んでみて」って貸してくれた本。
彼女は私にこの本を通してなにか言いたい事があるのかな。わかって欲しいことがあるのかな。
黒猫の死骸を埋めるシーンが出てきた。
主人公のエレンは病気がち、お母さんに世話をかけている自分が許せない。
お父さんはお母さんを愛していて、エレンのことは全く眼中にない。
うむうむ・・・。
ある日、お母さんが家に帰って来なくなって、
「絶対お母さんは私を捨てたりしない、きっと帰ってくる!」エレンは自分にそう言い聞かせます。
ところが帰って来たお母さんはエレンに向かって「お父さんと仲良くね」と言い残し、
荷物をまとめて出ていこうとする。
そこで、いきなりエレンはお母さんを殺害してしまう。
そこにお父さん、ただただお母さんを抱きしめて泣き崩れる。
エレンはそんなお父さんも殺してしまう・・・。
「わわわっー、私、ホラーダメなんですけど・・・。」
彼女は私が以前働いていた心療内科クリニックの患者さん。
いつも患者さんでいっぱいのクリニック、
院長先生は、よく私にボーダーの患者さんを任せてくれました。
各種心理テストができない年少者の判断は難しく、彼女もどこが悪いのかよくわからないとのコメント。
お母様と一緒に絵画を描いて頂き、お母様と一緒のところをまず観察、
母子の関係は極めて良好。
彼女は終始疲れている様子で、絵は暗い色単色使いの、うつとわかる内容のものでした。
そこからさらに数回の絵画テストを実施、絵画テストの結果と共に、
「うつ傾向あり」と院長先生に報告させていただいたのを覚えています。
いくつかのお薬が処方され、週1での個人セッションが始まりました。
最初はほとんど口をきいてくれず、ひたすら暗い感じの絵が描かれていきました。
その週にあったことをたくさん話してくれるようになった頃、
絵にも変化が見られるようになった来ました。
多色使いで明るい人物が多く描かれ、
絵の裏に書いてもらうコメントも前向きな言葉が沢山出てくるようになりました。
たくさんたくさん心のなかにあったくらい気持ちを絵で出していくと、
彼女の心のなかにはこんなにも穏やかな優しさが光っていた!
「そろそろ、私のところ卒業していいよ。」
そう彼女に伝えたのは1年半ほど前。
「唯一、なんでも話せる場所だから・・・。」そういって今まで通りに。
昨年、私の転居の際に、
「おとなになっても、いつでも必要なときには連絡くれたら会えるから。」
そう伝えた。
彼女の気持ちを考えてお母さんが週1回、今も1時間、車を運転して通ってくださっています。
彼女の絵は今では平和で愛がいっぱいにあふれています。
さあ、怖いけど、がんばって続き読むぞ〜。